Dr. Haustein (1928) |
もし、この画家が存命なら、アメリカ大統領と副大統領をどのように描くのか。
といっても、四十年近くも前に逝去されたので、あくまでも想像に過ぎません。
ただ、78歳と高齢で認知症と噂される大統領と極端な出世主義者の副大統領。
しかも、あからさまな選挙不正が行われたと、噂の絶えない当選者共ですから。
だから、腹黒い内面の本性を曝け出すかのように、描き出せると思った分けよ。
この画家は、クリスチャン・シャドといってドイツで生まれ、二十世紀に活躍。
ドイツ国内でもその世紀を代表する画家として、記念切手にもなったほどです。
画題は、ほとんどが肖像画ですが、写実的なようでも何か寓意も感じさせます。
特に、その眼差しに何か主張を含んているかのような鋭さは、現実を超越する。
つまり、日常にあるものが日常にないものと融合して制作された不思議さです。
この芸術上の表現技法はマジックリアリズムと言われますが、背景も風変わり。
本人と無関係な風景が描写されたり、他方、後ろめたい内面の描き出しもする。
Fräulein Mulino von Kluck |
冒頭の絵は、背後の影で手が伸びて、エイリアンのような不気味さを感じます。
研究の対象を表しているのかもしれませんが、ググったら性病の専門医だった。
しかも、一流のユダヤ人医学者と解説されて文化人のサロンに出入りしていた。
そのサロンは、知的ではあるものの、性的にかなり放縦な交流があったようだ。
だから、医者を肖像画に選んで描いたのでしょうが、やはり背景は不気味です。
忍び寄る死神の恐怖といった印象なのですが、本人の肖像は描き込まれている。
当然、サロンに出入りするのを許されたのも画力があったからですが、魅力的。
シャドは、このようにして生涯を専ら肖像画のジャンルに、専念していました。
そう思うと、あれだけ茶番な米大統領選挙の当選者は、どう描くのでしょうか。
色々と想像したくなりますが、実際のところ、彼は黄金の1920年代に活躍した。
当時の首都ベルリンは、芸術文化が栄えた爛熟期でナチスが台頭する直前です。
民主主義の精神や自由な思想を謳歌した共和制でも、退廃的な傾向は否めない。
このため、怖いもの見たさや性的倒錯など、敢えて表現するのが許されたのか。
この後、ナチスによって軍事政権が樹立されると、退廃芸術は弾圧されました。
特に、新即物主義の芸術家たちは、第二次大戦中に命を失う人も多かったんだ。
でも、彼は戦後を生き抜くことができまして、何と87歳の天寿を全うしました。
一体、何が幸運をもたらしたのか、多分、出会った後に結婚したモデルだろう。
だって、その奥さんの肖像画を繰返して描いていますので、愛していたのです。
というわけで、故人の美術館がアトリエの土地、アシャッフェンブルクで開館。
第二次大戦中、その地に疎開させようとした作品が、幸運にも間一髪で爆撃を逃れており、残された多くの絵画も、最近、夫人から寄贈されたことで、美術館の開催となったのですが、もし、このアクの強い肖像画に魅せられてしまったのなら鑑賞せずにはいられないだろうな、と思ったのでした。
Bettina(後に結婚) |
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