瑠璃光寺五重塔(国宝) |
空高くそびえ立つ五重塔は、じつに日本らしい風景なのです。
ここ、瑠璃光寺の塔は、山口県にあって国宝に指定されています。
時分が訪れた時は、くっきりと晴れ渡る五月の青空が背景でした。
五層の軒が空へ向かって反り上がる意匠が、優雅に舞い上がります。
檜(ひのき)の樹皮でふいた桧皮葺ゆえ、この反りが際立つのです。
これが、屋根瓦だったら、凹凸のごつごつ感があって、そうはいきません。
正面から拝み見る我々には、あたかも大鷲が羽根を広げたような印象か。
そして、天に向かって見あげると、すらりと細身に見えるような造作でした。
これぞ、日本を代表する五重塔ですが、これも、逓減率のおかげらしい。
一番下の軒から、上部に向かって小さくなりますが、ここが肝心なのです。
この瑠璃光寺の塔は、0.68と言う割合ですが、どれも同じではありません。
奈良時代に建立された法隆寺の五重塔は、半分まで下がりどっしりします。
初重と言われる層から、最上層部がしぼんで、実に安定感を醸し出すのだ。
ところが、この時代をへて、時代が近代まで下ると、人の好みも変化しました。
宮島・厳島神社五重塔(重文) |
佐渡の妙宣寺五重塔(重文) |
逓減する割合がぐんぐん落ち込んでしまい、五重全てがほとんど変わらない。
そのように見えてしまうのですが、典型的なのは京都東寺にある五重塔です。
その割合は0.7を超えてしまいますが、高さが五十メーターと意外に高層です。
このため、そびえ立つ建築物の印象が強まり、高さで威圧されてしまいます。
特に江戸時代の造作は、軽く三十メーター越えが、当たり前になりました。
個人的には、高さもそれなりで、優美な五重塔が素敵なんだと思うのです。
なので、瑠璃光寺の塔は三十メータちょっとで、すらりと0.68の係数でした。
こうして、江戸時代前に建立された五重塔は、全国で二十二箇所あります。
ところで、五重塔は、古代インドのストゥーパと呼ばれる塔がご先祖様です。
お釈迦様の骨「仏舎利」を納めたお墓ですが、これが日本で発達しました。
姿形を変えて、日本でたどり着いたのが五重塔という分けなんですね。
面白いのは、手すりや窓は、実際に使うためのものではなく、単なる飾りです。
塔の姿を整えるのが目的で、服の装飾のフリルみたいなもんでしょうか。
トップには青銅製の相輪(そうりん)もあり、これがストゥーパの名残らしい。
つまり、五重塔は実用的な建物より、拝む対象として建てられて来ました。
確かに、空に向かって立ち上がる塔は、心を捉えて離さないものがあります。
それで、自分には、もう一つ特別な五重塔が、青森県弘前市にありました。
最勝院にある塔で、大晦日の番組、ゆく年くる年でも紹介されたほどです。
除夜の鐘がなり、五層には雪が降り積もる中、塔全体が照らし出されます。
実は、大晦日に一度だけ訪れたことがありまして、スキー旅行の途中でした。
というわけで、歴史の無い北海道生まれのの自分にとっては、三重塔や五重塔を拝観することが趣味にもなってしまい、いろいろと訪ね歩いているのですが、スキー場のついでに訪ねることもあったりして、その時は、冬景色の借景につい見入ってしまうのでした。
おまけ:
五重塔を改築した天寧寺三重塔(広島県尾道) |
高山寺三重塔(長野県小川村) |
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