2018年9月18日火曜日

羅臼の漁師さんが、「あの歌、ウトロにとられたんだべ」と落胆するのも、ロケ地は宇登呂じゃないから - 映画「地の果てに生きるもの」(斜里町・宇登呂)

   
知床遊覧船の乗船まで時間を持て余したので、うろつくと歌碑を見つけました。
知床旅情」の歌詞が書いてあり、往年の名優、森繁久彌が歌った名曲です。

ただ、全国的に有名になったのは、加藤登紀子が昭和46年に歌ってからです。
セールスも百万枚を超えたけど、ヒットに火が点いたのは関西地区からなんだ。

この間、ご本人がTVインタビューで答えていましたが、ちょっと思い出した。
そういえば、関西から北海道に移住した人って、意外に多いと思うんだよなー。

移り住んで長い年月が経っても、関西弁のアクセントが抜けない人が多いから。
今回の夏休み旅行でも、泊まった先のペンションのご主人がそんな感じでした。

北海道の人って強烈な田舎の生い立ちがない限り、ほとんど標準語で話します。
逆に東京や横浜の人よりも、イントネーションがフラットでゆっくり話すよ。

だべさとか、おどけて使うだけだし、道産子は方言で引け目を全く感じません。
道産子の自分も、最初から生活が標準語だったし、アクセントは気が付きます。

元々、道産子は初代が移住者ばかりで、アイヌの人々だけが先住民なのでした。
だから、どこから移り住んでくれても、ウエルカムの風土・気風は変わらない。

むしろ、タレントの田中義剛が変な北海道弁を使うのを聞くと虫酸が走るんだ。
あの人、青森県の三八地方の出身なのに、大学が北海道で移り住んだってこと。

まあ、お花畑牧場の会社経営で北海道経済に貢献しているし、OKとしますか。
北海道には、何か惹かれる魅力があるのだろうし、自然の雄大さなんだろうな。

その典型的な観光地なら世界自然遺産の知床半島ですが、自然は非常に厳しい。
知床五胡に向かう途中、遠音別村の地名があり、そこに開拓部落があったんだ。

村の地名も残っているし、集落程度はあったのでしょうが、移住は厳しいはず。
二回も試みられているようですが、最終的には失敗に終わったのだそうです。

それが奇しくも、国立公園に指定された二年後の昭和41年になったのでした。
きびしくも美しい自然を残すための国立公園だから、営農は無理という証明だ。

  
一方、知床旅情は、映画”地の果てに生きるもの”で主演した森繁久彌の作曲。
映画の舞台は、秋から冬にかけて出稼ぎの漁師が立ち去った知床半島です。

その先端の赤岩地区で、冬の間、単身番屋で越冬する老人が主人公なんだ。
漁網を食い荒らすネズミ除けの猫に餌を与えるだけに暮らす、一人の老人。

その知床の大自然を背景に、主人公の老境を森繁久彌が演じていました。
それで、結末が自然の無慈悲さを感じずには入られないほどに、悲しいの。

一緒に暮らす猫が、流氷に取り残されてしまい、老人は何とか助けるんだ。
それが運悪く、海中に転落するのですが、自力で這い上がることだけは出来た。

必死に番屋を目指そうともがくが、厳しい冬の寒さで意識が遠のいて行く。
そんな中、カラスが死を予感したように現れて、頭の周りをうろつくのでした。

これがエンディングで、人間が、大自然の前ではなんと無力なんんだろう。
そんなこをと思い知らされますが、タイトル通りに地の果てに生きていたんだ。

岩尾別の開拓部落といい、赤岩の番屋といい、厳しい生活環境なんだよ。
まあ、僕らは観光で訪れただけで、景観の美しさを楽しむだけに過ぎません。

そんな北海道の美しさ素晴らしさは、世界中の人々に感銘を与えるんだ。
中でも、中国人の観光客が激増した挙句、土地まで買いあさる始末です。

これも映画『非誠勿擾』がヒットしたおかげで、ロケ地めぐりが観光の目玉。
今回、上さんを網走の能取岬まで連れて行ったけど、中国人もいたんだ。

設置から百年、八角形の灯台
オホーツクの塔

ここにも来るのかと思ったけど、この映画のおかげらしく、お客様は神様だ。
邦題は”狙った恋の落とし方”で、終盤には恋人が自殺を図ろうとします。

そこで思い出すのは、昨年、中国人女性の観光客が道東で失踪した事件ね。
自殺を匂わせるメモが見つかったりして、結局は海岸で遺体が見つかりました。

まあ、この映画の影響を受けたのかも知れず、そうだとしたら少し迷惑かも。
何も自殺するのに北海道を選ぶなんて、止めてもらえませんかと言いたい。

楽しく観光してもらえれば、それで充分なんだけど、映画の影響は大きいよ。
というわけで、斜里町は、知床旅情で漁夫の利を得たので、ウハウハでした。

なぜなら、映画のロケは根室支庁の羅臼町だったのであり、映画で老爺役を演じた森繁久彌の銅像は、その町のしおかぜ公園に建っていることを思えば、宇登呂に建っている歌詞の石碑が、観光遊覧船の乗り場にあること自体、羅臼の漁師さんが、「あの歌、ウトロにとられたんだべ」と落胆するのも、分かるような気がしたのでした。



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