自分の通った大学は、坂道を登り詰めた谷あいのどん詰まりにありました。
だから、ハイキングみたいなもので、登校したら残るは下山だけなのです。
結果、講義が連続しないで次まで時間が空いてしまうと、やることもない。
降りてしまって街中で遊んでもいいのですが、もう一度登らねばならないの。
そんな無駄はしたくないし、後は自主休講にして講義ノートを借りたりする。
そうでなければ、喫茶部へ行き、一杯九十円のコーヒーで暇をつぶしました。
それでも、時間が余ってしまうと、後は図書館で本を読んだりしていました。
学生総数が二千人に満たない小規模な大学でも、図書館は立派です。
書籍も豊富だったし、経済系の大学なのに、不思議な蔵書もありました。
それは、平凡社の出版した東洋文庫でして、ハードカバーが緑色でした。
それで、特にお気に入りは、「耳袋」という江戸後期のという文学作品です。
江戸後期の幕臣、根岸鎮衛が、町の噂話を書留めた備忘録なんだとか。
発表する気が毛頭なかったようですが、その面白さから世間に広まりました。
だから、作品が現代へと伝わり、当時の世情を生き生きと伝えてくれます。
怪談、笑い話、艶笑譚、逸話、よく効く薬、人情話など、小ネタばっかり。
終いには、狐や狸に化かされた話も登場して、噂話の範疇みたいなものか。
まあ、江戸時代の後期だから古文でも分かりやすく、つい引き込まれます。
そんな、自分なりの図書館の活用でしたが、雑誌も豊富に閲読できました。
特に、思想関係の雑誌で未だに覚えているのは、「思想の科学」です。
なんたって、当時は、昔、紙芝居作家だった加太こうじが編集長だったの。
どうして、この人を知っていたかというと、”黄金バット”の原作者だったから。
TVアニメも欠かさずに見ていた中、黄金の骸骨って考えりゃグロだよなあ。
まあ、そんな黄金バットを書いた人が、なぜお堅い雑誌のトップだったのか。
紙芝居が廃れた後、大衆文化の研究、評論をしていたのが縁なんだって。
今は、この雑誌は休刊していますが、創刊当初の目的を見ると分かります。
それは、敗戦後間もなく、太平洋戦争がなぜ起きたのかを探ることでした。
つまり、第一に敗戦の意味をよく考え、そこから今後も教えを受け取ること。
関連して雑誌のリーダー格だった鶴見俊輔は、論文でこう問いかけました。
大衆はなぜ、太平洋戦争へと突き進んでいったのか?、ということなのです。
それで、見出したその理由の一つは、大衆が言葉によって扇動されたから。
言葉のお守り的使用法と述べていますが、意味もよくわからずに信じ込む。
そんな言葉が、軍隊、学校、集会などで訓示や挨拶に散りばめられました。
鬼畜米英、八紘一宇、国体というのを、読んだり聞いたことがあるでしょう。
このキーワードが必ず入っていたというのですが、これが洗脳のお守り言葉。
つまるところ、政府はこの言葉を巧みに使って政策を正当化し続けました。
このため、本当に戦争が必要だったのか、その実相は伝えられませんでした。
要するに、大量のキャッチフレーズが国民に繰り出され、戦争は賛美される。
熱狂的な献身と、敵国の米英に対する熱狂的憎悪とが醸し出されます。
これって、国民が骨の髄まで欺かれた異常事態だけど、今なら騙されない。
思い出してごらんなさい、野党がどれほど、モリカケと意味不明に騒ぐのか。
そして、九条やら、護憲など、なぜ憲法改正が不要なのか、よく分からない。
金科玉条、教条主義で、念仏のごとく唱えて、大衆に刷り込みを図ります。
でも、これが野党が与党を攻撃するお守り的用法だったなら、もう飽きたわ。
これほど、大衆をだませなかった”お守り言葉”ほど、無残なものはないねえ。
しかも、野党を支援するマスメディアの偏向報道は、この用法の延長線上。
要するに、彼らは古典的な大衆煽動にしがみつき、そこから解き放れない。
でもねえ、現代はインターネットによる、自由に発言するメディアの時代です。
だから、一方的にメディアが押し付け、ねつ造した見解は、評価に値しない。
どんなに与党へ攻勢を強めても、政党支持率は野党が落ち込むだけだよ。
つまり、大衆は騙されずに、自律した判断で与党を支持しているのですな。
こうなると、思想の科学が課題とした大衆扇動の抑止は、成果が出ている。
それとも、野党があまりに愚かで愚昧だから、大衆を出し抜けなかったのか。
というわけで、マスメディアも野党連中も既に無用の長物に成り果てました。
一方、雑誌「思想の科学」は、様々な「普通の人」が発言できる場所を提供する目的で、投稿の募集と生活綴方運動の推進を展開していったのですが、これを現代に置き換えてみれば、インターネットでブログを使って投稿したり、ツイートしたりする活動自体が、その目的と重なり合うのかもしれず、そう考えてみれば、自由に情報を共有し合い、自らが玉石混交の情報から真実を見出せるメディア=インターネットが確立できたからこそ、この雑誌が抱いた趣旨を果しえたのではないかと、思ったのでした。
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