作家、中山市郎 |
最近は、怪談を語る動画を視るのが楽しみになりましたが、語り手次第だろう。
話の怖さに必要な臨場感も、その臨場感は、語り口の上手下手で分かれますな。
まあ、その一人に、中山市郎という作家さんがいてストーリー展開がお上手だ。
もっとも、体験と言うより取材を踏まえているから、脚色もあるとは思います。
この方は、怪談のイベントやラジオ番組で、出来事を紹介するのが仕事なんだ。
それで、聞いていると、話の前後関係でつじつまの合わないこと思い出したり。
最初は聞き流すだけで分からないのですが、良く咀嚼すれば違うと感じました。
例えば、自殺の多いマンションの話では、屋上に出るドアの最初の説明がそう。
鎖でがんじがらめの施錠と説明しますが、住人の話では鍵を持っているらしい。
話の展開では、住人には洗濯物を干すのに鍵を渡されているのが分かってくる。
しかも、住人に案内されて屋上に出た時は、厳重な施錠の表現は消えてしまう。
いとも簡単に解錠すると、屋上へ簡単に上がった光景を紹介するのが変でした。
化野(あだしの)念仏寺 |
ただ、厳重な施錠の頃と、屋上に出られた時は時間差があったのかもしれない。
そう思うとして、次に自殺に誘われる原因が、屋上からの光景につながります。
それは、このマンションの近くには、西に無縁仏の墓場があり、東は比叡山だ。
京都の西側は、結界が貼られていないので、魑魅魍魎も跋扈しやすいとの説明。
こうして、浮かばれなかった霊が救いを求めて延暦寺の比叡山へ向かうらしい。
そう推理をしながら説明をしていく辺り、怪談作家の面目躍如だと思いました。
それで、住人の話では、夜中に大きなものが落ちるドスンという音がするとか。
はたまた、部屋を人が歩きぬけて行く気配を感じるそうですが、悪さはしない。
その住人は、決まったように霊の通り抜ける壁にお水を挙げていると話します。
霊障と一緒に住みつつ、怖さを感じずにいる婦人の話が、不思議さにあふれる。
ネタばれになりますが、このマンションは京都西部の嵐山に実在しております。
建築されて半世紀を経ると、自殺話の出た頃にはコンクリート外壁が汚い印象。
しかも、所有者のお嬢さんが中庭へ飛び降り自殺した風評も、尾ひれを付ける。
命名が建築工法からだとは言え、”メタボ広沢”と救いようのないマンション名。
こんなこともあって怪談話がエスカレートしたようですが、どう思われますか。
一方、最近はリノベーションできれいになり、名前も”SEASON嵐山”で再出発。
こうして、最近は霊障の話も少なくなったようで、めでたしめでたしのようだ。
というわけで、京都が都になって千三百年ですので、今も霊魂が彷徨う街かも。
歴史のある分、恨みつらみで亡くなって成就できずに浮かばれない人もいた分けで、そういった思念の強い、科学的に説明できないエネルギーに惑わされる人々がいたとしても、それは何となく納得してしまう分けで、実話と言うより脚色された怪談と割り切って、楽しんでいる自分なのでした。
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