(中央、Edith Peinemann, 1937~) |
音楽家は、演奏活動を止めたり引退してしまえば、つい忘れ去られるものです。
でも、レコード録音が多く残されて、それが名盤となれば、記憶に止まります。
だから、録音技術の発達した現代なら、歴史に名を留めるきっかけは高くなる。
ただ、演奏家に求められる技量が伴っていることは、言うまでもありませんが。
こう思うと、録音を残す機会に恵まれた演奏家は、運を引き寄せたという事だ。
レコードの時代がそうだったでしょうが、音楽界の大物も引き立ててくれます。
指揮者とソリストという、協奏曲のカップリングもまた、録音のチャンスだな。
この点で、冒頭の写真のエディト・パイネンマンも、その好例で立役者がいる。
その人はジョージセルで、クリーブランド交響楽団を率いた指揮者なのでした。
当然、クラシック界でも巨匠に数えられていて、録音の名盤も残されています。
タクトを振るジョージ・セル |
このセル氏が、彼女を贔屓にして演奏活動を華々しく行ったのが1960年代。
ただ、同氏は1970年に急逝して、彼女は突然後ろ盾を失ってしまったのです。
このため、その後の演奏活動は低調になって、残された録音も少ないのでした。
だけど、最近のユーチューブに、彼女の録音がポツポツとアップされ始めたの。
特に、セル指揮クリーブランド響との共演で、バルトークのバイオリン協奏曲。
世間では2番の録音が多いのですが、この動画もそうで緊張感にあふれた演奏。
とあるバイオリニストのブログでは、演奏がもっとも難易度の高い作品と紹介。
プロなのに自分は弾けませんと、あっさり白旗を挙げているぐらいなのは驚き。
他方、民族音楽の旋律を使いつつ、12音階が全て出てくる調性感の希薄な旋律。
その混然としたメロディに、暗い情念の様な鬱屈をためたバイオリンが奏でる。
鑑賞する方も気合を入れて聞かないと、放り出してしまいかねない作品なんだ。
でも、折に触れて聞きたくなってくる不思議な作品で、彼女の演奏も秀逸です。
というわけで、セル亡き後の活動は地味ですが、八十歳を過ぎてもご健在とか。
と言うより、音楽教育に転身して、ヴァイオリン科の教授活動を続けて来たのはご立派で、ESTA(ヨーロッパ弦楽器教育者協会)の責任者を務めているなど、地味ながらも音楽界への貢献ははかり知れないと思うのでした。
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