2022年4月26日火曜日

ナチスの文化政策が仇となり、ドイツ音楽界に国際的なヴァイオリニストが払底してしまった時期に、若干19歳で音楽界に現れた才媛 - エディト・パイネンマン(バイオリニスト)

(中央、Edith Peinemann, 1937~)
   
音楽家は、演奏活動を止めたり引退してしまえば、つい忘れ去られるものです。
でも、レコード録音が多く残されて、それが名盤となれば、記憶に止まります。

だから、録音技術の発達した現代なら、歴史に名を留めるきっかけは高くなる。
ただ、演奏家に求められる技量が伴っていることは、言うまでもありませんが。

こう思うと、録音を残す機会に恵まれた演奏家は、運を引き寄せたという事だ。
レコードの時代がそうだったでしょうが、音楽界の大物も引き立ててくれます。

指揮者とソリストという、協奏曲のカップリングもまた、録音のチャンスだな。
この点で、冒頭の写真のエディト・パイネンマンも、その好例で立役者がいる。

その人はジョージセルで、クリーブランド交響楽団を率いた指揮者なのでした。
当然、クラシック界でも巨匠に数えられていて、録音の名盤も残されています。

タクトを振るジョージ・セル
   
このセル氏が、彼女を贔屓にして演奏活動を華々しく行ったのが1960年代。
ただ、同氏は1970年に急逝して、彼女は突然後ろ盾を失ってしまったのです。

このため、その後の演奏活動は低調になって、残された録音も少ないのでした。
だけど、最近のユーチューブに、彼女の録音がポツポツとアップされ始めたの。

特に、セル指揮クリーブランド響との共演で、バルトークのバイオリン協奏曲
世間では2番の録音が多いのですが、この動画もそうで緊張感にあふれた演奏。

とあるバイオリニストのブログでは、演奏がもっとも難易度の高い作品と紹介
プロなのに自分は弾けませんと、あっさり白旗を挙げているぐらいなのは驚き。

他方、民族音楽の旋律を使いつつ、12音階が全て出てくる調性感の希薄な旋律。
その混然としたメロディに、暗い情念の様な鬱屈をためたバイオリンが奏でる。

鑑賞する方も気合を入れて聞かないと、放り出してしまいかねない作品なんだ。
でも、折に触れて聞きたくなってくる不思議な作品で、彼女の演奏も秀逸です。

というわけで、セル亡き後の活動は地味ですが、八十歳を過ぎてもご健在とか。
と言うより、音楽教育に転身して、ヴァイオリン科の教授活動を続けて来たのはご立派で、ESTA(ヨーロッパ弦楽器教育者協会)の責任者を務めているなど、地味ながらも音楽界への貢献ははかり知れないと思うのでした。



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