2019年2月28日木曜日

クニマスも帰去来の辞が言えるまでには、まだ幾星霜があるんだろうな - 秋田県田沢湖スキー場(その二、たざわ湖スキー場、秋田県)



歸去來兮 - さあ帰ろう、
田園將蕪胡不歸 - 田園が荒れようとしている、
既自以心爲形役 - いままで生活にために心を犠牲にしてきたが、
奚惆悵而獨悲 - もうくよくよと悲しんでいる場合ではない、
悟已往之不諫 - 今までは間違っていたのだ、
知來者之可追 - これからは自分のために
實迷途其未遠 - 未来を生きよう、
覺今是而昨非 - 道に迷ってもそう遠くは離れていない、
  
これは、帰去来の辞と言い、日本でも広く知られている漢詩の一節です。
作者は陶 淵明(とう えんめい)で、四五世紀の中国六朝期に活躍しました。

彼の生きざまは、仕官・出仕を望まずに四十一歳で隠棲してしまったことです。
後世、田園詩人と呼ばれるようになったのも、その暮らしぶりからでしょう。

ゆえに、まさに故郷に帰らんとする時に、真情を吐露したのがこの詩なんだな。
でも、どうしてこのゲレンデで漢詩を思い出したか、不思議に思われるでしょ。

実は、発端は田沢湖でして、絶滅した魚種のクニマスを思い出したからでした。
別名、木の尻鱒(きのしります)といい、それはたつ子姫伝説に由来しました。

  
そのあらすじは、大きな龍に化身したたつ子は、田沢湖の主になってしまう。
これを知った母親が、心配で岸辺に松明りをかざしながら名前を叫ぶのです。

すると竜が現れ、永遠の美貌という願いがかなったと母親に答えるのでした。
その答えに嘆き悲しんだ母親は、松明りを湖面に投げ捨てて家に戻りました。

するとその燃えさしに尾びれがつき、湖心に向かって泳いでいったのでした。
これがクニマスのいわれで、木片の焦げから魚体が黒くなってしまったとさ。

面白い話ですが、実はクニマスは、半世紀以上も前に湖から姿を消しました。
絶滅と言うてん末ですが、実態は人為的なもので、湖水の酸性化が原因です。

戦前、日本は国力増強が叫ばれて、産業育成の目的で電力を過剰に求めました。
このため、田沢湖をダムに見立て、水路式発電の生保内発電所が作られました。

一方、貯水量の目減りを補う目的で、そばを流れる玉川の水を引き込んだのね。
ただ、この川は、毒水といわれるほどの強酸性で、湖水の生き物には打撃です。

こうして、数年も経たずに、中性だった湖水は死の海へ変貌してしまいました。
湖面は強い酸性を示すコバルトブルーに変色し、生物の姿すら見当たりません。

韓国ドラマ「IRIS(アイリス)」のロケ

戦後になり玉川の中和作業も進むと、流入する水も酸性度が多少低下しました。
それでも、最近はウグイのような魚も見かけられますが、強い酸性の湖水です。

仮に中性まで戻っても、絶滅したクニマスは、もうこの世にはいなくなった。
それでも、ホルマリンの標本から遺伝子の再現に挑んだとしても無理でした。

こうなると、将来のバイオテクノロジーで種の再生も断たれてしまったのか。
そんな悲劇のクニマスですが、五年前、生き延びていたのが発見されました。

場所は遠く離れた富士五湖の西湖で、あのギョギョのさかな君の発見したの。
確かに過去に放流された事実は残っていますが、生存が確認できていません。

一方、西湖にはヒメマスが棲息していますが、中には色の黒い固体もあった。
産卵前のメスと思われていましたが、実際は、それがクニマスだったのです。

その後の調査で、西湖に約七千五百匹程度が生存しているのも分かりました。
この湖は、田沢湖に比べて十分の一以下の大きさなので、数的にいる方かな。

というわけで、田沢湖の湖水は、中和事業が進んだ現在でも、依然として酸性が強いため、残念ながら到底住める環境にはないのですが、帰去来の辞のように、クニマス自身も帰る日を待ち望んでいるのかもしれないと、ふと思ったのでした。



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2019年2月25日月曜日

IT会社の役員だから、その辺の事情は知っているのだろうけど、暇つぶしに駄文を書いて受賞するのはやめてくれ - ニムロッド(上田岳弘・第160回芥川賞)

Nimrod

ご存知の通り、二月と八月は、芥川賞・直木賞の文学賞月間に様変わりします。
ただ、この二ヶ月は”にっぱち”と言って、商売で売り上げが芳しくありません。

八月は、夏の暑い季節の最中、消費者の購買意欲も減退するといわれています。
それに、帰省など旅行シーズンと重なって、お金の使い道が異なるのでしょう。

一方、二月は年越しの準備や、正月休みでお金を使いすぎて息切れしたのかも。
まあ、寒い冬だから庶民は、暖房の効いた部屋に閉じこもりがちだと思います。

もし、これが法則性に沿うというのなら、流通、建築、音楽産業がそうみたい。
ただ、二月は、バレンタインデーのおかげで、チョコレートの消費が伸びます。

年間の二割程度が消費されると言うのですから、当てはまらないのもあるんだ。
夏のマリーンスポーツ、冬のウインタースポーツは、逆に書入れ時だからなあ。

それでも、商売が生業の人は、この”にっぱち”を肌で感じているからでしょう。
やっぱり、商売上がったりだと思っているらしくて、出版業界もそうだったの。

戦前、月刊”文藝春秋”の編集長、菊池寛が、この時期の売上挽回を狙いました。
もちろん、小説家芥川龍之介もこの雑誌に投稿したし、菊池寛とは友人でした。

一方、直樹三十五は、当時の文壇ゴシップ記事を投稿したりで文藝春秋に貢献。
そこで思い出の二人を記念して将来性のある作家に賞を送って作品を掲載する。

そんな話題性で始めた文学賞でしたが、目論見通り作家の登竜門となりました。
それで、今年もその季節がめぐってきましたが、何と受賞作を知っていたんだ。

どうしてかというと、NHK第一ラジオの朝の番組で紹介されていたからなの。
毎週、土曜日の朝七時前に放送される”著者からの手紙”と言うコーナーでした。

それが二月三日のことだったのですが、寝床の中でうつらうつら聞いてました。
覚えているのは”ニムロッド”と言うタイトルで、確か英国の哨戒機だったはず。

小説では、主人公が、メールでダメな飛行機として紹介された一機なのですな。
このニムロッドこと、登場する荷室さんも、ダメ出し飛行機を紹介し続けます。

なんだか分け分からん小説だと寝床で思ってしまったけれど、芥川賞をゲット。
この後、実際に文藝春秋を買って読みましたが、現実性の薄い空間がつまらん。



あまりに面白くない小説で、三分の二を読んだところで自分でジエンドにした。
ビットコインの発掘を稼働率の低いサーバーで始める所は、面白かったけどね。

だけど、今や仮想通貨のセキュリティーは無防備・無策と判明してしまった。
だから、砂上の楼閣みたいな現実感覚で、蜃気楼みたいな小説にしか思えない。

いや、話を面白くしたかったら、Gacktが広告塔だったスピンドルはどうかな。
華々しく触れ回ったワリには、運営がずさんで数百分の一にまで価値が下落ね。

俺だったら、主人公が恨んで、関係者を一人ずつ探して殺戮を繰り返す設定だ。
この方が、スキャンダラスで社会性もあったりして、終いには犯人が自殺する。

それとも、出川哲郎のCMで有名な、仮想通貨取引所コインチェックはどうだ。
ハッキングされて、数百億円分が引き出しされるという強奪事件があったよな。

信頼性が現在の金融インフラよりも高いといわれたブロックチェーンなのにさ。
こちらも、ネットで履歴をあぶりだして、犯罪者を一人ひとりぶっ殺して行く。

最後は関係者まで血祭りにするとか、実名は無理としても似たような名前でね。
というわけで、糞みたいなSF私小説よりも、昨年の”百年泥”の方が格上だよ。

昨年度下半期の受賞作ですが、過去と現実を行ったり来たり、タイムスリップしたりしながら、進撃の巨人に登場する”立体機動装置”に似た交通手段で通勤するインド人たちの姿こそ、SF感覚にあふれていて面白さで一気呵成に読みきったのですが、今回はにっぱちで商売に期待しただけでご指名したという、ハズレの芥川賞だったなと思ったのでした。



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2019年2月22日金曜日

ハチ高原とか、神鍋高原のゲレンデは、雪質の条件さえ良ければ、長野の白馬に負けず劣らずと断言いたします - 但馬地方のゲレンデ(兵庫県養父市周辺)

雪景色の姫路城

実を言えば、この二月の連休明けの週で、平日全てをスキーにしていました。
混雑しておらず、ゆっくりのんびり滑っていたいというのが本音なんだよな。

だから、会社がこさえた三連続有給休暇の強制取得制度を、がっつり悪用です。
建国記念日の翌日から三日間、それにプラスで金曜日も有給休暇にしちゃった。

これで九連休になったけど、平日がターゲットだったので、祝日から出発です。
それで、どこへ出かけたかと言うと、ブログ村で余り話題にならない西日本よ。

しかしながら、西日本にも冬季に積雪の多い地域は、あまたに存在しています。
日々の生活に難儀を与えるのが雪ですが、意外に豪雪地帯に指定されているの。

今回は、兵庫県の但馬地方がターゲットになりましたが、もちろんハチ高原だ。
氷ノ山後山那岐山国定公園に指定されているし、オールシーズンの観光地です。

まあ、冬場に滑りに訪れるだけだともったいない気もしますが、なぜか西日本。
これだけ長い休暇なら、北海道とか行けば良かったのにという御仁もいるはず。

でもねえ、西日本の面白さは、冬場でも季節感のギャップが激しいことなんだ。
だって、瀬戸内海の地方は、晴れの日も多くて陽だまりのある暖かいイメージ。

クリックで拡大するよ

東京から新幹線で出かけて駅に降りれば、温暖な気候だと思わずにいられない。
ところが、瀬戸内から日本海方面を目指して車を走らせれば様相も変わります。

段々、山間に入れば、うっすらと雪化粧をして来る山々が目に付いてくるんだ。
ハチ高原は但馬地方になりますが、古来、兵庫県の南部は播磨・摂津の国です。

明治以降、県としてまとめられたんだけど、但馬牛で有名な地域は、豪雪地帯。
道産子だから意外と雪国なんだと親近感を持ってしまいましたが、そんな印象。

まあ、兵庫の姫路から車で播但高速道に入って、ちんたら北上して行きました。
もちろん、姫路城も見学したけど、十年に一度あるかないかの雪景色の風景。

なかなかの風情に余韻を残しつつ、播但道を走ると竹田城の直下を抜けますな。
この竹田城は、雲海に浮かぶ天空の城として有名になったのは、ご存知のはず。

でも、霧が出ていなくば、麓から単純に見上げるお城だから、単なる山城です。
だから、何の変哲も無い廃城にしか見えず、PRが良かったんだと思った次第。

それで、今回のベースキャンプは、養父市のハ鹿町にあるホテルを選びました。
運よく四連泊で予約できたりで、買い物も便利でスキー場へのアクセスが抜群。

奥神鍋スキー場
出石そばも食べたぜ

片道を小一時間で着けるので、毎日、ゲレンデを取っ替え引っ替えしてました。
こうして、周辺七つのゲレンデを滑りまくったけど、ちゃんと観光もしたんだ。

出石で有名な蕎麦を食べに行ったり、豊岡の玄武洞を見たり 圧巻は応挙寺だ。
この寺は、日本海に面した香住町にある大乗寺ですが、襖絵が重要文化財なの。

寺の部屋をめぐって円山応挙と弟子一同が描きましたが、一番はワンコの絵ね。
このワンコの目が無邪気で可愛いくて、無垢な目はお地蔵さまに通じるとか。

江戸時代、ワンコがたった一匹、人々の報謝を受けて伊勢参りをした時代です。
お寺さんの説明を聞きながら、そんな逸話も、改めて思い出してしまいました。

というわけで、東日本の人間も、この辺りのゲレンデは出かける価値ありです。
大体、日本の半分は「豪雪地帯」に指定されている分けでして、もっと言うなら「豪雪ではない地帯」の方がちょっと少ないくらいですから、日本は雪の国なのだといっても過言ではありませんが、日本の歴史・文化を育んできたのが雪のほとんど降らない畿内、それ以西の地域であったことから、西日本の豪雪地帯は自分にとっても一つの盲点であったと思うのでした。



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2019年2月19日火曜日

ここは昔、冬季オリンピックの競技会場に立候補していたと、リフト券売り場のお姉さんに言ったら驚いていたよ - 霧ヶ峰スキー場(諏訪市・長野県)

レッスンバーンとしては最高

世の中、人生百年時代なんて呼ばれるようになり、日本は長寿国だと思います。
現在の平均寿命では、女性が87歳で男性が81歳と、いずれも過去最高。

世界では女性2位、男性3位なのだそうで、右を見ても左を見てもジジババ。
高齢化社会と呼ばれつつ、今や65歳は若い方で第二の青春を満喫するもの。

勤務先も継続雇用制度のおかげから、65歳までは働けそうでありがたいな。
まあ、再雇用で給料はガクンと落ちますが、コンビニよりはマシでしょうか。

それに、歩いて会社へ通勤できるメリットがあり、小中学校の通学気分なんだ。
毎日、通勤は徒歩だし、集団登校の小学生一行に遭遇したり、似たりよったり。

歩くことは体にいいし、毎日数千歩以上になって足腰が鍛錬できてうれしい。
このおかげで、スキー旅行したって筋肉痛になることも殆どなくなりました。

一方、老いの不安から”年を取るのは嫌だな”と思う人も、いるとは思います。
はっきり言いますが、六十の還暦なんて、単なる人生の通過点かも知れんな。

そう思うと、死ぬまでスポーツは続けると思いますが、特にスキーはそうだ。
リフトで山頂まで連れて行ってもらう分、斜面を滑り降りるだけで極楽気分。

体力に合わせて緩斜面のバーンを、ちんたら滑れば疲れることもありません。
ただ、冬のスポーツと言うのが難点ですが、それ以外の季節はハイキングだ。

他方、勤められる間は、会社まで歩きが基本だから、これが代わりになるか。
こうして、体力から見て、スキーは老いに問題ないスポーツと思っています。

だけど、老後の備えを考えれば、レジャーにお金を使いすぎても良くないか。
少しでも節約すれば、それに越したことはなくてリフト券の割引を探します。

PDFで中身はこちらから

リフト券売り場でも、シニア割引って言うのがあって、免許証を見せるんだ。
年齢に見合えば、一日券・半日券を割り引いてくれますが、基準がバラバラ。

年齢では、50~60才の間で大体3パターンで、割引額もかなり違います。
今回、白樺湖方面へスキー旅行したけど、霧が峰スキー場が驚愕の設定なの。

1日券でも大人で2,570円とかなり割安ですが、シニアは何と1,540円でした。
これが4時間券では1,020円になり、こちらも子供料金扱いにしてくれます。

年齢制限としては55歳以上なんだけど、こちらは平均的なパターンでしょう。
車山高原もしらかば2in1も同じ年齢でしたが、白樺湖ロイヤルヒルズが違う。

60才以上と高めで年齢未満のおじじとしては、泣く泣く普通券で滑りました。
というわけで、意外にスキーをエンジョイするシニアが復活しているんだとか。

車山高原のクワッドリフトで相席した年配の男性によれば、最近は、この白樺湖方面のスキー場へ再デビューを図ったシニアが増えてきているのだそうで、お金にも時間にも余裕の出来た年齢層がやって来ているのかと思いますが、昔、混雑しすぎでリフト待ち一時間が当たり前だった時代に比べて、待たずに乗車できるなんて夢みたいで、これならスキーをやり直してみても、その価値はあるんじゃないかと思ったのでした。



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