2018年2月24日土曜日

ありがとう。おかげで芥川賞が取れたよ。それにしてもきたねえ。 - 小説「百年泥」(石井遊佳・インドチェンナイ)

第158回芥川賞受賞

またまた、二週間の現地工場へのインド出張となってしまいました。
いつもの通り、ANAの直行便でムンバイへ向かっている最中です。

十時間以上のフライトにもなり、本当に長旅なのでやることが無い。
映画でも見るか、後は買って来た新聞とか雑誌を読むぐらいです。

ハリウッドの映画も見飽きたし、ここは邦画の「三丁目の夕日」だな。
自動車整備の工場で働くクロちゃん役の、堀北真紀が実にかわゆい。

彼女自身、きっぱりと芸能界から身を引いて結婚してしまいました。
だけど、この映画を見ていると、彼女自身の人生をダブらせた印象。

今は子育てで大変でしょうが、幸せになってもらいたいと思います。
それで、この映画だと、二時間半くらいは暇をつぶせそうでした。

残るは、機内誌の紙でも正方形にカットして折り紙にチャレンジ。
鶴、犬、うさぎを折りながら、むずがっている赤ん坊にあげたりします。

サンキューと親から感謝されますが、インド人は英語は話して当り前。
大学、工専クラスの高等教育だと、全授業が英語だからしょうがない。

しかも、給料を奮発してくれる会社に勤めたければ、英語は必須なの。
だから、日本人がインドで仕事すると、英語でバカにされたりもします。

悔しいけど、日本人は英語がダメなのを、まざまざと実感したりして。
まあ、そんな時間つぶしのついでに、残る時間は雑誌を読むのだ。

買ってて来た「文藝春秋」三月号は、芥川受賞作を掲載しています。
その内、インドつながりの受賞作もあり、途上で読まずにはいられない。

タイトルは、「百年泥」っていうんだけど、大洪水で堆積した泥が象徴。
つまり、インド社会の屈折した社会様相を、オリとして例えたようです。


スラムドッグ$ミリオネアの映画も思い出したりして

まあ、舞台は南インドのチェンナイで、ムンバイでなくともインドはインド。
この混沌とした亜大陸の巨大国家を、いやというほど表現しております。

小説の筋なんか時間軸も場所もぶっ飛んで、自在にストーリー展開。
過去と未来、日本とインドを往来しつつ、意識の流れを表現したのかな。

まあ、主人公は借金返済のかたに、インドで日本語教師になる破天荒。
ありえへん設定で、既に異次元の世界ですが、SFっぽい趣向もある。

つまり、小説のインドでは、通勤に有翼飛行装置なるものが使われます。
あまりに、交通渋滞が激し過ぎて、空を飛ぶことで解消しているんだとか。

まるで、アニメ「進撃の巨人」で使われる立体機動装置みたいな感じです。
でも、インド風の味付けが面白くて、有力者じゃないと使えないのよ。

しかも、ネットオークションで許可無く装置が出品されるとか、IT大国だ。
ただねー、変な漢字の熟語で表現しないで欲しいと、思うんだよね。

有翼装置を外す表現で脱翼と書いていますが、脱糞と読み違えたの。
なんで、ここでクソするんだと思ったけど、糞と翼の漢字は良く似ている。

最近、老眼気味で活字が読みづらくなったんだけど、間違えますわ。
というわけで、今回の受賞作「百年泥」は、一気に読んでしまいました。

まあ、インドに関わって仕事をして来た人であれば、ここまで、インド社会の内面を小説の中に書き連ねてくれたのは見事と言うほかなく、ふむふむなるほどど感心しながらついつい没頭して読んでしうのですが、もしインドに関わっていない人であっても、観念小説風の実験手法がなかなか面白いので、ぜひ一読をお勧めするのでありました。

注:タイトルは、文藝春秋のインタビューで、作者が最後に放った言葉です。



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