Hermann Scherchen (1891 - 1966 ) |
多くのアーティストに愛される名曲が、カバー曲でヒットするのはよくある話。
でも、これは音楽のジャンルから言えば、クラシック音楽以外の分野でしょう。
クラシックは、作曲者が作品を発表して、演奏家によって披露されるパターン。
つまり、毎回の演奏が常にカバーになりますが、違うとすれば演奏の解釈です。
中には、オーケストラの指揮者が、スコアに手を加えてしまうことがあります。
特に、ストコフスキーはそうで、他には楽器の配置を大胆に変えたりしました。
一方、作曲者の原典版であっても、校訂者次第で内容が異るケースもあります。
これを考えると、クラシックの作品も毎回の演奏がカバーなのかもしれません。
<ベートーヴェン交響曲のスコア集>
ベーレンライター版(デル・マー版)
ブライトコプフ旧版
ブライトコプフ新版(ハウシルト版他)
ペータース版(5番ギュルケ版、4番・6番ハウシルト版)
ただ、ベートーベンのスコアに違いがありますが、素人が聞くと分かりません。
もし、演奏の違いが分かるとしたら、それはテンポとかカットされたかどうか。
これは、CDのライナーノートに書かれてある演奏時間などを見れば分かります。
しかし、それでも早いか遅いかぐらいで、演奏内容に大きな相違は出ないもの。
だけど、ロックの世界では、カバー曲のテンポが爆速になって驚くこともある。
アレンジし過ぎで、自分が驚いたのは、バッジーというバンドのオリジナル曲。
”BREADFAN”という曲なんだが、ヘビメタバンドのメタリカがカバーしていた。
そのテンポが爆速で驚いたのですが、日本のバンドもカバーしていたのを発見。
”人間椅子”のバンド名で、原曲は言わずに曲名が”針の山(イカ天バージョン)”。
パクったのかなと思いつつ、とにかくこれも爆速で驚いたが、歌詞は津軽弁か。
人間椅子、Budgieそっくり |
何を言っているのかさっぱり分かりませんが、ユーチューブから視聴可能です。
他には、パンクロックのカバー曲も早くて、ユーチューブ視聴なら次のバンド。
演奏バンド:Me First And The Gimme Gimmes
クリックすると、ユーチューブへ飛ぶよ~ん
パンクミュージックは、シンプルで強力な演奏でテクに走らず押しまくります。
キャッチーなメロディーは無用で、反抗心を原動力として突っ走る爆速演奏だ。
目新しいと聞いていて面白いのですが、単純な演奏で飽きるのも早いのが本音。
なので、たまに聞くのが適当と思いますが、クラシックだって特急演奏がある。
それは、半世紀以上も前に活躍した指揮者で、ヘルマン・シェルヘンという人。
亡くなる直前に、ベートーベン交響曲全集を録音しましたが、これが快速演奏。
指揮では帝王カラヤンのテンポの速い演奏が有名ですが、それ以上に超特急ね。
怖いもの見たさというか、時々、聞きたくなってしまうという、キワモノ演奏。
それだけ、ネットで取り上げる人もいて、作品の演奏解釈が何だったのだろう。
特にベートーベンの交響曲8番は、普通、演奏時間が30分と紹介されています。
それが、シェルチェンの演奏では、22分15秒であっという間に終わってしまう。
カラヤンにしても、交響曲全集の録音では、26分25秒でそれなりに早いんだな。
何でも、彼の意図は、ベートーベンがスコアに提示した音符速度に見合う演奏。
本来は、この指示が指揮者の解釈次第で、はるかにゆったりとした演奏になる。
まあ、メトロノームを信じて、スコア通りに演奏するとどうなるかという実験。
あまりに突飛ですが、これぞ、反抗心から出たクラシック界のパンク野郎だな。
ただ、こういった速度記号の疑問は、学者の間でも盛んに議論されたようです。
その結論ですが、今ほど音楽の芸術性にこだわらず、さらっとした演奏みたい。
つまり、個々の音符にニュアンスを求めるより、速いテンポで楽曲を引締める。
その方が、作品の性格や表現の効果を確保するとベートーベンは考えたらしい。
となれば、今のクラシック界の演奏スタイルは、思い入れたっぷりで嫌みだな。
昔は、音楽を楽しめればよいのであって、これぞ、パンクミュージックの元祖。
というわけで、本当はシェルツェンさんは、正統派の演奏もやっている分けだ。
ユーチューブに残された、ロイヤルフィルハーモニーとかウインーン歌劇場管弦楽団で録音されたベートーベンを聞くと、手堅い名指揮者の演奏が聴けたりもするのですが、自分としては、爆速の演奏で楽器が追いつけなくなって悲鳴を上げ始めるような第九の四楽章などは、颯爽感、爽快感もあって、こういった演奏が作曲家の時代には受け入れられていたのかもしれず、それこそが当時の流行り、パンクミュージックであったのだろうなと思ったのでした。
※青い文字の字句をクリックすると、説明のあった楽曲が鑑賞できますよ。
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