2020年7月21日火曜日

生き物が他の動植物や周囲の生物以外のものに似せた色彩、形、姿勢をもつのが擬態ですが、目立たせるための”標識的擬態”なら、この蝶なのでしょう - クロアゲハ(飯島市民の森)

クロアゲハ、飯島市民の森で

上さんが近所で黒いアゲハ蝶の写真を撮ったので、見せてくれました。
似たような蝶は色々とあるのですが、調べるとクロアゲハでしょうかね。

前翅に白い紋と呼ばれる模様に、後翅にオレンジ色の紋模様が特徴。
カラスアゲハは前翅が瑠璃色に輝くようですが、それがないので違うな。

もう一つ、ジャコウアゲハもありますが、オレンジ色の紋様が違うのです。
しかも、胴体側面にオレンジ色の帯が走るのが特徴的で、それもない。

他方、近所でジャコウアゲハが食べかけのウマノスズクサも見かけたんだ。
なので、ジャコウアゲハかもしれないと思ったけど、普通のクロアゲハだな。

この蝶は、アゲハと共に柑橘類の葉を食草にしますが、近所にも多い。
ゆずの畑もあるし、みかんや夏みかんなど庭木で栽培されているからな。

ただ、数は少なく、五月になって二三回、ふわっと飛ぶ姿を見かけます。
美しいと思いますが、目下の関心は近所で分けて貰ったウマノスズクサ。

ジャコウアゲハ

栽培する老婦人は、庭へジャコウアゲハが産卵に来ると話してくれます。
分けてもらった苗も、食べかけの丸い穴が見られたから、繁殖するんだ。

ならば、自分のベランダで育てれば、何時か卵を産み付けに来るだろう。
そんな期待を抱きつつ、植え替えてみたら地上部の葉は枯れてしまった。

ただ、ブログで相談した栽培家から、やがて新芽が出ると言われました。
まあ、その言葉を信じて待っていますが、実は、この草は毒草なのだそう。

腎機能障害を起こすアリストロキア酸を含んでいるのに、食草なんだな。
要するに、食べて毒をせっせと体内に蓄積して、食べられないようにする。

このため、昆虫も鳥類も、決してこの蝶の幼虫も成虫も捕食しません。
有毒を知っているからで、逆にこの蝶の姿をパクる昆虫も出ているほど。

それが、翅の紋様がそっくりなクロアゲハで、オレンジの胴体色だけ違う。
そこまで似せなくても、捕食者には苦い経験で擦りこまれているのだろう。

ウマノスズクサ
ウスバサイシン

ところで、この有毒成分は漢方薬になるウスバサイシンも含んでいます。
ならば、このウスバサイシンを、ジャコウアゲハに餌で与えたらどうなるのか。

でも、この野草は成長するのに数年を掛けるので、量が賄えないかも。
なので、繁殖力のあるウマノスズクサの方が、食欲を満たす野草だろう。

というわけで、クロアゲハもジャコウアゲハも見られる都会の里山なんだ。
住宅街なのに、小規模な丘の連なりで、市民の森など里山が残されている贅沢さもあって、ウグイスもジュウシマツもごく普通に季節が廻れば鳴いてくれますから、そこにクロアゲハの彩りが加わるのであれば、ナチュラリストにはうってつけの土地柄なのでした。



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