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右が、作者の羽田圭介 |
テレビで、”バス旅Z”を視ていましたが、この旅メンバーだった作家の作品です。
職業意識があって、旅先で書店を見つけては作品の刊行物を確かめていました。
もちろん、書店の主人にも律儀に挨拶して、稼ぎが印税だから本屋は大事だな。
バス旅リーダーが少しルート選定に雑な印象の中でも、本人は意外に細かいの。
地図帳を持ってしょっちゅう眺めていたのを思い出しますが、そんな彼の作品。
祖父と孫の関係に焦点を当てた小説ですが、紀行文学とは無関係で介護文学だ。
そんなジャンルがあるのかと驚いてしまいましたが、高齢化社会だから必至か。
主人公は、失業中で資格受験勉強に忙しい中を、まめに祖父の面倒を見ている。
だから、意外に孝行息子な雰囲気を醸しつつ、一方の祖父は要介護老人なんだ。
”死にたい”が口癖なってしまった祖父を見て、その願いをかなえようとします。
つまり、主人公の孫はあえて過剰に介護をして、先回りサービスをしてしまう。
なんでも面倒を見てあげると、本人も生きる気力がなくなるので冥途へ出立だ。
ただ、自分は認知症に罹った父親を一人で面倒を見たので、そんなに甘くない。
逆に寝たきりになってしまって、老人専門病院へ入院させるしかなくなるはず。
実に、生きる気力の無くなったお年寄りというのは、悲惨なものでかわいそう。
これも、祖父が、自活できず子供たちの間をたらい回しに遭った結果でしょう。
それで、その最後が長女の母親だったのですが、主人公と違って悪態がひどい。
そんな環境で老後を送るのが怖くなりますが、主人公は良く面倒を見ているな。
そんな彼にも彼女がいまして、出会うとモーテルへ直行で性欲のはけ口なんだ。
まあ、彼女にも愛想が付かされるのですが、自身は禁欲的に肉体の改造着手だ。
結局、自身の心境の変化もあってか、再就職がかなって主人公は家を離れます。
というわけで、同時受賞は、お笑い芸人ピースの又吉さんが書いた『火花』だ。
こちらの作品は、マスコミにも大々的に取り上げられて、大ベストセラーになりましたが、こちらの作品にしても、介護現場の人間関係をユーモラスに描いた描写があったりして、介護文学の分野として素晴らしい作品ではないかと、思うのでした。
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