(John Foulds、1880 – 1939) |
この作品は、一応三楽章形式の協奏曲なのですが、厳密なものではありません。
ただ、作品のタイトルが、”動的な三連祭壇画”という意味付けになっています。
祭壇画の場合、三枚にはストーリーが関連しますので、その点では協奏曲です。
しかも、楽章の構成を考えますと、急~緩~急で仕立てたようにも聞こえます。
なので、標題付きの三つのパートは、楽章として扱って良いのだと思いました。
それで、各パートは、重要な音楽要素を動的に表現する上で作曲されています。
Part I : Dynamic Mode (ダイナミックな旋法)
Part II : Dynamic Timbre(ダイナミックな音色)
Part III : Dynamic Rhythm(ダイナミックな拍子)
ユーチューブでも、作品名で検索するとヒットしますので簡単に鑑賞できます。
ただ、録音が少なく、調べた限りでは二点ほどしかないのが不思議に思います。
先ず、ボーンウイリアムズのピアノ協奏曲と抱き合わせたロイヤルフィル版だ。
1984年のレコードで、作品発表が1930年なのに、かなり遅れたリリースです。
地味な作品の組合せですが、交響楽団も作曲家も母国イギリスになる録音です。
一方、近年のCDでは、バーミンガム市交響楽団の録音でこの作曲者の作品のみ。
この楽団は、昔、サイモン・ラトルがタクトを振って色々な録音を残しました。
その頃から人気の出始めたオーケストラですが、この作品では後任者が録音だ。
フィンランド人のサカリ・オラモが指揮をして、実にダイナミックな演奏です。
作曲者の表現したかった意図を汲んでいるかのような演奏で、圧倒されますな。
それで、この協奏曲の各パートを鑑賞して個人的に感じたことを書き留めます、
先ず、パートIは、ピアノを打鍵楽器に見立てた力強い旋律が繰り返されます。
繰り返しのリフも、ハードロックのディープパープルで聞いたような懐かしさ。
ロックファンだったなら、なぜか思い出しつつ聞いてしまうような気がします。
標題にありますが、ダイナミックな旋法と表現されていて正にロックの魁です。
ですが、作品の発表が約一世紀前のことで、当時はかなり前衛的だったはずだ。
次に、パートIIでは、和音の調性を無視した弦楽器の不気味なグリッサンド。
レコードのターンプレイヤーで回転が狂って、遅くなった時の音の変化みたい。
この弦楽器の奏法は、指板の上を滑らせつつ、2つの音をつなぐ演奏スタイル。
フレットのない分、滑らかに音が下降しますが、なぜか暗転を感じてしまうな。
ラベルやドビュッシーの印象派のような美しいメロディなのに調和を破ります。
これがダイナミックな音色なのだろうと思いましたが、セオリー通り緩徐楽章。
これからパートIIIでは、ダイナミックな拍子の転化で、ピアノが正に打鍵楽器。
音色のある打楽器に近い表現で、なだれ込んだように締めくくって終わります。
という分けで、いやはや、こんな作品が世に埋もれてきたのは何故なんだろう。
ウイキペディアでも説明していますが、独学の作曲家であったが故に楽壇からは疎遠だったのが災いして、現在でも不当に忘れ去られているとあり、これが日本だったなら、ゴジラを作曲した伊福部昭なんか、独学なのに音楽大学の学長にまで栄達したのですから、残念、イギリスの権威主義が才能を殺してしまったのかと思うばかりでした。
おまけ:宗教的な三連祭壇画はこんな感じ
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