2015年1月19日月曜日

大量輸送の必要性があるほどの距離とは思われないんだけど - クワッドリフト雑考(志賀高原)(長野県)

安全索道クワッドリフト

志賀高原は、日本でもっとも有名なスキーリゾートとして、言わずもがなでしょう。
現在、19ヶ所のスキー場と52基のゴンドラ・リフトが運行され、規模がどでかい。
 
冬場になれば、スキー場を移動するのに、シャトルバスが運行されるぐらいです。
一方、蔵王温泉スキー場も規模が大きいですが、索道数は41基と及びません。
 
全体の標高差は980mありますが、通しで滑られるコースがなくて少し残念です。
なぜなら、標高トップの横手山と、山麓のブナ平では、エリアがまったく違います。
 
もし、一気通貫で滑るとしたら、寺小屋から東館山、発哺ブナ平のコースでしょう。
この標高差は730mにもなり、かなりの滑りがいがあるのは言うまでもありません。
 
ただ、コースが複雑でひとたび間違えば、上級コースに出たりしてハードルも高い。
自在にスキーを操るスキーヤーが、ゲレンデマップを片手に楽しめる感じでしょうか。
 
家族連れや初心者の方は、一面バーンで見渡せるスキー場の方が滑りやすい。
迷子にならず、衝突や怪我もしないで、見通しの良いコースが重宝されるのです。
 
こういった趣向のゲレンデですと、縦に長く標高差のあるスロープは不要でしょう。
幅広であればよく、その意味では、高天ヶ原・市の瀬のスキー場が該当します。
 
どのスキー場もリフトが二三本で、一本一本のリフトを乗って楽しむ感じでした。
長い滑走距離を余り必要としませんから、リフトもそこそこの距離しかありません。
 
特に驚いたのは、距離が五百メーターしかない高速クワッドリフトの存在でした。
一の瀬ダイヤモンドスキー場にあるのですが、乗車時間はたった二分でしかない。
 
だいたい、高速リフトはスキーヤーの大量輸送を目的として設置されるものです。
一時間当たり、最大二千四百人を頂上駅へ運びあげてしまう能力を持ちます。
 
これだけ、頂上駅へ初心者やらファミリーのスキーヤーが降り立ったらどうなるか。
ゆっくりのんびりと滑り降りるでしょうから、途中、人でごった返す可能性もある。
 
ただ連絡コースが充実していますので、お隣のゲレンデへ簡単に移動できます。
こうして、さほど問題にならなかったのが、志賀高原のドでかさなのだと思いました。

安全索道高速クワッドパンフ
グーグルドライブはこちらから
(握索装置の技術説明あり)全ページご覧いただけます
  
このクワッドリフトは、安全索道㈱が会社として最初に設置した索道になります。
時は昭和62年、競合する日本ケーブルの導入が三年ほど早いので後発でした。
 
スキーブームの華やかりし頃、映画”私をスキーに連れてっても流行りましたなー。
松任谷由実の「恋人がサンタクロース」も、映画の挿入歌で一般に浸透しました。
 
ネコも杓子ももてたければ、スキーだと滑りに出かけしまうご時世だったのですよ。
だから、儲かるのが当たり前で、運営会社も無造作にクワッドに投資していました。
 
こうして、この志賀高原には実に短いクワッドリフトが乱立していったというわけです。
平成15年のゲレンデパンフを見ましたが、探し出せたリフトは次の通りです。
 
① 笠岳スキー場 笠岳第一クワッド 406m (3分27秒) 
② 一の瀬ダイヤモンドスキー場 一の瀬ダイヤモンドクワッド 474m (2分15秒)
③ サンバレースキー場 法坂第一クワッド 518m(2分53秒)
④ ブナ平スキー場 ブナ平クワッド クワッド 521m (2分54秒)
 
この内、①番のリフトは、固定式循環式でロープに搬器が固定された方式です。
秒速2メーターと月並みな運行速度ですが、四人がけとなれば輸送力は大きい。
 
おそらく時間当り二千人は運べたと思いますが、四人が腰掛けるとも限りません。
実際の輸送力は多少間引くとして、スキーブームが去った現在はどうなったのか。
 
利用客もかなり減少してしまいましたし、一人か二人しか乗らなくなったはずです。
こんな環境では動かすほど赤字がかさむため、終に笠岳は休止してしまいました。
 
一方、残り三基は速度を落としながら運行中で、異なるタイプの自動循環式です。
これは、搬器が乗車する際、ロープ(索道)から離れてゆっくり動いていく方式です。
 
ご存知かと思いますが、腰掛けた途端、急にスピードを上げて運んでくれるのです。
搬器が索道に合体して頂上駅まで運び上げてくれて、この加速感がたまりません。
 
この方式は、搬器の着脱方式にノウハウがあるようで、特許がらみだと思いました。
だって、日本ケーブルと安全索道の方式では、押さえバネの構造が違っています。
 
日本ケーブル会社案内より
グーグルドライブはこちらから
上に掲げた安全索道製と比較してください

デザインの差異も極端に目に見えて分かり、後者はスプリングが下向きでした。
握索装置と言うのだそうですが、前者の装置ではコイルのピッチが詰まっています。
 
他方、安全索道はピッチがゆるくて格好が大きいめで、取り付け方向も違いました。
リフトに乗っていると、搬器が支柱の車輪を通過する際に衝撃が伝わるのでしょう。
 
チャリンチャリンと小気味よく音を立てるのですが、これが結構怖い感じもするのです。
ひょっとして、搬器が外れてしまったらどうしようと、つい不安に駆られてしまうのでした。
 
というわけで、当時の既存ゲレンデにクワッドを掛けると五百メーター強がやっとです。
この後、全国で滑走距離の長い縦線形のスキー場が、次々に開発されました。
 
結果的に、長距離のクワッドが目立つようになりましたが、これも当然のことでしょう。
寒さをしのぐためにフード付きで、運行時間の短い高速リフトは、趣旨が分かります。
  
こうして、早い時期に高速クワッドリフトが導入された志賀高原では、リフト待ち一~二時間が当たり前なメチャ混みの状況を解消しようとして、せっかちに導入されたのであろうなと、今になって思うのでありました。

 
おまけ:
志賀高原パンフ2002-3
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全ページご覧いただけます
  
※短距離のクワッドリフトは、意外に見つかります。
白樺湖ロイヤルヒル 第2クワッドリフト(高速) 510m
車山高原 クワッドリフト スカイジェッター(高速) 551m
八方尾根  黒菱第2クワッド(固定式) 275m
HAKUBAVALLEY鹿島槍 第3クワッドリフト(固定式) 250m

     
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